2006-10-01から1ヶ月間の記事一覧

平家物語を読む186

巻第十二 吉田大納言沙汰*1 さて鎌倉殿は、全国的に守護の設置と任命を行う権利を朝廷より得て、「日本国惣追捕使*2」となり、田一反ごとに兵糧米を割り当てるべき旨を、朝廷へ申し立てた。朝廷の敵を滅ぼした者は半国を与えられるという事が、法華三部経の…

晴れたので、川沿いの国立公園へ行く。 太陽の光を背に受けながら川沿いの道を歩く。顔を撫でる風はひんやりと冷たいが、背中はぽかぽかと暖かい。 目の端が明るく光る何かを捕らえた。光を浴びて輝く黄色の葉だった。 林のまだ光の届いていない場所で、キク…

ようやく晴れた。山での紅葉見は、今週末が最後の機会かもしれない。 先週末に訪れる予定だった山は盛りを過ぎたと聞いたので、それよりもやや南にある渓谷へ行ってみることにする。昨年の夏に一度、訪れたところだ。 渓谷の紅葉は想像以上に彩り豊かだった…

ハロウィーンが近い。 車で外を走っていても、様々に装飾されている家があちこちで目に付き、なかなか楽しい。 スターバックスで思わず衝動買いしてしまった2006年ハロウィーンのマグカップ。もう一種類、赤いモンスターのものもあった。

平家物語を読む185

巻第十二 判官都落*1 ここに、足立新三郎という雑役を務める者がいた。鎌倉殿より「あいつは身分の低い者であるが、格別に気のきく者だ。召し使われるといい」と、義経に送られた者であったが、内々には「九郎の振る舞いを見て、この頼朝に知らせよ」と命じ…

この夏はいやにあっけなかったが、どうやら秋も駆け足のようだ。11月前だというのに、セーターが手放せない。 ただし今日も明日も、外の景色は見るものの目を楽しませてくれる。秋はつくづくいい季節だと思う時だ。 一時は減っていたフィーダーへの野鳥の訪…

平家物語を読む184

巻第十二 土佐房被斬*1 さて、九郎判官・義経は、鎌倉殿から侍十人をつけられていたが、内々に義経が嫌疑を受けているとの噂が流れると、侍たちは鎌倉殿の意向に合わせて、一人ずつ鎌倉へ戻ってしまった。兄弟であることにより、去年の正月、木曾義仲を追討…

このところ急に朝晩の冷え込みが厳しくなった。 そのせいかどうかは分からないが、朝、クロが柔らかいフンをすることがある。今朝もそう、数日前の朝にもあった。 どちらの時も部屋を暖かくすると、クロは丸めていた身体を伸ばして寝るようになり、午後には…

平家物語を読む183

巻第十二 平大納言被流*1 九月二十三日、平家の残存者で都にいる者をそれぞれの配所へ送るようにと、鎌倉殿が朝廷へ申し入れたため、それぞれが配所へ赴くこととなった。大納言・時忠卿は能登国、息子の讃岐中将・時実は上総国、蔵頭・信基は安芸国、兵部少…

平家物語を読む182

巻第十二 紺掻之沙汰*1 同年の八月二十二日、高雄の文覚が鎌倉へと向かっていた。文覚は、鎌倉の二位・源頼朝卿の父である故義朝の正真正銘の首だというものを自身の首に掛け、弟子の首には故義朝の乳母の子である鎌田政清*2の首を掛けさせている。治承四年…

昨日は早朝から雨が降り出したため、山へ紅葉を見に行くのはやめた。その雨も昼前に上がり、日が傾く頃には雲の切れ間から青空が顔を覗かせるほどになった。 今朝は青空、ただし風がすこぶる冷たい。暖かくして川沿いの国立公園へ行く。 十日ほどで、すっか…

昨夜、スイスから夫が戻る。 久方ぶりに滑らかな触感のチョコレートを食べた(お土産)。 さて、北部の山脈では紅葉がピークを迎えていると聞く。明日は早起きして行く予定。

平家物語を読む181

巻第十二 大地震 平家はすべて滅び、西国も鎮まった。国は国司に従い、庄園はその領主の思うままになった。身分の高い人も低い人も皆が安堵を覚え始めた頃の七月九日正午、大地がひどく揺れ、それは長く続いた。都では、白河のほとり*1の六つの御願寺*2がす…

数日ぶりに晴れたので、午後から裏の森へ散歩に出た。 呼吸のたびに冷たい空気が身体の中に流れ込み、とても気持ちがいい。 ところどころに、黄色を見かける。 キツツキがあちこちで盛んに動き回っていた。 こちらは、Red-bellied Woodpecker(ズアカシマセ…

平家物語を読む180

巻第十一 重衡被斬*1 本三位中将・重衡卿は、狩野介宗茂*2に預けられ、去年から伊豆国にいた。が、奈良の寺院の僧徒たちが再三に渡って引き渡しを要請したので、「それならば渡せ」と、源三位入道・頼政の孫である伊豆蔵人大夫・頼兼がその任務を命じられた…

「秋風」

志賀直哉の「秋風」は実際の事件を題材にして書かれた戯曲である。 科学者の夫が二十歳前の娘に、家を出て老歌人のもとへ走った同じく歌人の妻への思いを語っている。老歌人が死に、妻は家へ戻りたい様子を見せているのだ。 妻が善良な人間であることはよく…

友人親子が帰り、昨夜からクロとふたりになった。あれほどにぎやかだったのが嘘のよう。 部屋でくつろぐクロ。寒くなってきたので、カーペットや椅子の上でくつろぐことが増えてきた。 指を広げて後ろ足の手入れ中。 方向転換して走り出す瞬間。

父のこと

先日、実家の母が「荷物を送るから何かほしいものはないか」と言うので、父さえよければ中野孝次の「清貧の思想」を入れてほしいのだが、と頼んでおいた。少し前に「清貧」について書いた時、私が両親のもとを離れるか離れないかの頃に、父の本棚で見かけた…

昨日から急に寒さが来た。 夫は仕事で国外へ、そして入れ替わるように友人が仕事で私の住む町へ来ている。昨日も今日も、友人の子供と一緒に折り紙をした。いろいろ作っているうちに、子供の頃にせっせと作ったユニット折り紙を思い出し、今日はそればかり作…

「アラスカ物語」

「アラスカ物語」を読むのは二度目だが、二十歳になる前に日本を出て以来、最後までエスキモーとしてアラスカで過ごしたフランク安田の人生に、数年前とは違った思いを抱いた。初めて親しみを覚えたのである。 海岸地域から内陸へのエスキモーの移動が成功し…

平家物語を読む179

巻第十一 大臣殿被斬*1 一方、鎌倉殿は宗盛公に対面していた。自身の座っている場所から中庭を一つ挟んだ向かい側の棟に宗盛公の座席を設け、鎌倉殿は簾越しに相手を見ていた。使者の比気藤四郎能員*2に「平家の人々に対して特別の恨みを持っているような事…

クロの行動が落ち着いてきた。 あれほどどこへ行くにもついて来きていたのに、このごろはさっぱりだ。ケージにいるときはやたらと眠そうだし、部屋に出ている時は独りの時間を楽しんでいる風。 もうすぐ二歳になるクロ、少し大人になったのだろうか? 相変わ…

川沿いの国立公園へ行く。 林の中まで太陽の光が差し込む時間を見計らって、家を出た。 湿原の木道を歩いていると、キツツキが木の幹をつつく音がしたので立ち止まる。Downy Woodpecker(セジロコゲラ)だ。 と、また別の場所からも同じような音が聞こえる。…

平家物語を読む178

巻第十一 腰越*1 さて、大臣・宗盛公が九郎大夫判官・義経に連れられて、東国への交通の要衝である粟田口*2を過ぎたのは、五月七日の早朝の事だった。既に皇居は雲の彼方となった。逢坂の関の清水を見て、宗盛公は泣きながらこう詠んだ。 都をばけふをかぎり…

平家物語を読む177

巻第十一 副将被斬*1 五月七日、九郎大夫判官・義経が生け捕りにした平氏の人々を連れて、関東へ赴くという噂が流れた。これを耳にした宗盛公は義経のもとへ使者を送り「明日、関東へ向かうと聞きましたが、親子の愛情のつながりはなかなか断ち切る事のでき…

どんぐり

近頃、私の暮らすアパートの駐車場にはトン、カン、時にはパラパラパラという音が鳴り響いている。 音の主はどんぐり、あちこちにあるオークの木が実をつける季節になった。いつも「おいしいものはないか」と探し回っているリスがこれを見逃すわけがない。ど…

ふと気付くと、クロの体がまた大きく丸くなっている。 うさぎを飼っている方が公開している画像と見比べたりして、「このくらいは大丈夫だろう」などと思っていたのだが、我が家のうさぎは毛が短いことを忘れていた。 このままだと、もし毛の長いうさぎにな…

平家物語を読む176

巻第十一 文之沙汰*1 大納言・時忠卿父子の居所も義経の宿所の近くだった。世の中がこのようになってしまった上は、どうなっても仕方がないと思うべきであるのに、時忠卿はまだ命を惜しく思ったのだろう、息子の讃岐中将・時実を呼んで「他見をはばかる手紙…

「川釣り」

井伏鱒二の「川釣り」に収められている小品や短編小説を読んでいると、湿った谷間を勢いよく下る渓流、ほどよく広がる河原に滔々と流れる川と、氏が今まさに訪れている川が私自身の知っている川の姿を借りてたちまち目の前に現れる。 しかし、何と言ってもや…

平家物語を読む175

巻第十一 鏡 四月二十八日、鎌倉の前兵衛佐・頼朝は従二位になった。越階*1といって位が二階上がる事ですらめったにない朝恩であるのに、これは三階の昇進である。本来は三位になるはずだったが、平家の先例を忌み嫌っての事であった。 その夜の十二時頃、三…