徒然草を読む182

ACORN2007-11-03

第二百四十三段

 八つになった年に、父*1に尋ねた事がある、「仏とはどのようなものでございますか」と。父が、「仏とは、人が成ったものである」と言ったので、私はまた尋ねた、「人はどのようにして仏に成るのでございますか」と。父は、「仏の教えによって成るのである」と答えた。また私が、「それでは、教えを下さる仏は、何によって教えを受けられたのでしょう」と尋ねると、父は、「それもまた、先の仏の教えによって仏に成られるのだ」と答えた。私がまた、「その教えを始められた、第一の仏というのは、どのような仏でございますか」と言うと、父は、「空から降って来たのか、それとも地から湧いて出て来たのだろうか」と言って笑った。「問い詰められて、答えられなくなってしまいました」と、いろいろな人に話して楽しんでいたようだ。



――徒然草・終り――

*1:卜部兼顕(うらべのかねあき)