徒然草を読む181

紅葉

第二百四十二段

 とこしえに逆境と順境とに振り回されるのは、偏に苦から離れ楽を求めようとするがためである。楽というのは、何かを好み愛する事である。これを求める心が、止む事はない。人が楽欲*1するもの、その一つが名声である。名声には二種ある。行状と才芸の名誉である。もう一つの楽欲が情欲、そして食欲である。あらゆる願いも、この三つの楽欲には及ばない。これらは、誤った考え方から起こり、多くの苦痛をもたらす。求めないに越した事はない。

*1:ぎょうよく:仏語で欲望を意味する