徒然草を読む109

第百三十五段

 資季*1大納言入道とかいう方が、具氏*2宰相中将に対して、「お前が尋ねようとする程の事は、何事であろうと答えてみせるぞ」と言った。具氏が「どうでございましょうか」と言うと、大納言入道は「さあ、負けずに言い返しなさい」と言う。具氏は「きちんとした学問は少しも学んでおりませんので、尋ねるに及びません。何という事もない事の中で、覚束ない事を尋ねましょう」と言った。大納言入道が「学問に関する事を何事でも答えようというのだから、身近にありふれているくだらない事は、何事であっても解き明かしてみせよう」と言ったので、天皇の御側に仕える人々、女房たちも、「興味のそそられる論争だ。同じ事なら、天皇の御前にて言い争いなさるがいい。負けた方の人は、ご馳走を用意なさるように」と決めて、天皇の御前で対決する事となった。具氏が「幼い頃からよく耳にして覚えているのですが、その心が分からない事がございます。『むまのきつりやう、きつにのをか、なかくぼれいり、くれんどう*3』というのは、どのような意味なのでしょうか。お答えいただきましょう」と言ったところ、大納言入道は返答に窮して、「これはくだらない事であるので、言うまでもない」と言った。が、具氏が「始めから学問の深い事は分かりません、身近なくだらない事を尋ねましょうと申し上げました」と言ったので、大納言入道が負けとなり、約束のご馳走を盛大にふるまう事となったという。

*1:すけすえ:藤原資季

*2:ともうじ:源具氏

*3:子供の謎掛けの一つであったようで、解釈はいくつかある