徒然草を読む174

第二百三十四段

 何かについて尋ねてくる人というのは、その答えを知らない訳でもないだろうから、それを真に受けて答えようとするのは馬鹿馬鹿しいと思うのだろうか、相手の心を惑わすような曖昧な返答をする人がいるが、よくない事である。既に知っている事でも、更に詳しく知りたいと思って尋ねているのかもしれない。また、本当に知らないで尋ねてくる人もいないはずがない。ただ率直に言って聞かせたならば、落ち着いた素直な人だと思われるだろう。
 まだ耳に入っていない事について、既にそれを知っている人から、「それにしても、あの人の事件には驚きました」などとだけ手紙で言われると、「どのような事件があったのですか」と、反対に人を遣わせて尋ねなければならない。これは不愉快な事である。世間では言い古された事でも、たまに聞きもらす事もあるのだから、相手がいぶかしく思わないようにはっきりと知らせてやればいい。何の不都合があるというのか。
 このような事は、世故に通じていない人がする事である