徒然草を読む91

第百十段

 双六の名手として有名な人に、その要領を尋ねたところ、「勝とうと思って打ってはならない。負けるまいと思って打つのがいい。どの方法がすぐに負けてしまうものなのかをよく考え、その方法を使わないようにして、一目でも遅く負けるような方法を用いるのがいい」と答えた。
 これは、この道をよく知っている人の教訓であるが、身を治め、国を平和に保とうとする道も、また同じである。

第百十一段

 「囲碁・双六を好み、そればかりして日を暮らす人というのは、四重*1・五逆*2にも勝る悪事をなしていると思う」という、ある高徳の僧の言葉は、耳に残り、感心させられた。

*1:しじゅう:仏教における四つの重罪(殺人戒・盗戒・淫戒・妄語戒)

*2:ごぎゃく:仏教における五つの最も重い罪(父を殺す・母を殺す・阿羅漢を殺す・和合僧を破る・仏身を傷つける)