徒然草を読む150

Female Ruby-throated Hummingbird

第百八十五段

 秋田城の次官で陸奥守の安達泰盛*1は、並ぶ者のない乗馬の名手であった。従者に厩から馬を引っ張り出させた時に、馬が足をそろえて境の横木をひらりと越えるのを見て、「これは気がはやっている馬だ」と言って、他の馬に鞍を置き換えさせた。また、足を伸ばしたままで境の横木に蹴り当ててしまった馬に対しては、「これは勘が鈍いので、間違いが起こるだろう」と言って、乗る事はなかった。
 その道を知らない人ならば、これほど用心する事はないであろう。

*1:あだちやすもり:前段の安達義景の三男で、父の跡を継いだ