徒然草を読む145

Ruby-throated Hummingbird

第百七十八段

 内侍所で行われた御神楽*1を見たある高貴な方の邸に仕える侍たちが、誰かに対して、「あのお方は、宝剣*2を持っていらっしゃった」などと言っているのを聞いて、御簾の中にいた女房の一人が、「別殿への行幸でお持ちになるのは、昼御座の御剣*3でございますよ」と忍びやかに言ったというのは、心憎い事である。この女房は、古参の典侍*4だったと聞く。

*1:毎年12月に行われる

*2:三種の神器の一つ

*3:ひのざのごけん:清涼殿内の天皇の昼の座所に備え置かれた御剣

*4:ないしのすけ:宮中の女官の勤める内侍司の中の次官