言葉を失わせる風景

Hoshino's Alaska
 届いたばかりの写真集のページをめくっていて、ある一枚に何の前触れもなく心を奪われた。青空の下、水辺を果てしなく埋め尽くす白い光……ワタスゲだろうか。
 人の気配が感じられない雄大な自然を前にすると、何ともいえない絶対的な安堵を覚えることがある。私のような人間には、他人との関係の中では決して保つことのできない類の感覚だ。この時、言葉は忘れられている。



 星野道夫の写真を見ていると、まるで自分自身の眼でその風景を眺めているような気持ちになることが多い。それはきっと、自然と彼の眼との間に少しも意図的なものが入り込んでいないからなのだろう。彼の眼が限りなく透明に近いものであったことを思う。