徒然草を読む151

第百八十六段

 吉田という名の馬乗りが、「馬というのはどの馬も手強いものである。人間の力では敵わないと知っておくべきだ。これから乗ろうとする馬があるなら、まずよく見て、強い所、弱い所を知っておいた方がいい。次にくつわ・鞍などの馬具に危ない所があって気になるようならば、その馬は走らせない方がいい。こういった用意を忘れる者は、馬乗りとは呼ばない。これが秘訣である」と言っていた。

第百八十七段

 どの専門においても、それに携わる人というのは、たとえその芸が下手だとしても、上手で専門ではない人と同席する時に、必ず勝る事がある。油断がなく慎みがあり、軽々しく振る舞わないという事は、偏に勝手気ままに振る舞うのとは等しくないからである。
 芸・仕事だけではなく、大抵の振る舞い・心遣いも、不器用ではあるが慎み深いというのは、成功を得るもとである。巧みな様子で勝手気ままなのは、失敗を招くもとである。