徒然草を読む143

第百七十六段

 清涼殿の「黒戸*1の御所」とは、小松の御門*2が即位なされてからも、昔、臣下の列にいらっしゃった頃、煮炊きなどのまね事をなされていたのをお忘れにならずに、常にそのような事を営まれた間である。かまどに焚く木のせいで煤けたため、黒戸と言われるようになったという。

*1:くろど:清涼殿の北廂から弘徽殿に至る北廊の西向きの戸

*2:光孝天皇:第58代天皇