徒然草を読む101

アジサイ

百二十三段

 無益のことをして時を過ごす人を、愚かな人とも、道理に合わない事をする人とも言っていいだろう。国のため、君のために、やむを得ずしなければならない事も多い。余った暇はいくらもない。考えてみよ、人の身においてどうしても必要なのは、第一に食べる物、第二に着る物、第三に住む所である。人間にとっての大事とは、この三つに過ぎない。飢えず、寒くなく、風雨に侵されずに静かに暮す事ができるのが豊かという事である。ただし、人は皆病にかかる。病に冒されれば、その苦しみは耐え難い。医療を忘れてはならない。薬を加えた四つの事を求めても得る事ができないのが、貧しいという事である。この四つがどれも欠けていないのが、豊かという事なのだ。この四つ以外を手に入れようとする事が、贅沢なのである。四つの事が満たされていれば、誰が不足と感じようか。

百二十四段

 是法法師*1は、浄土宗の中で誰にもひけをとらないような人でありながら、学問に優れている事を表に出さず、ただ明けても暮れても念仏を唱え、安らかに世を過ごしている。何とも望ましい姿である。

*1:ぜほうほうし:この時代の僧で歌人