徒然草を読む24

第二十九段

 つくづく思うに、何事につけても、過ぎ去った昔への恋しさだけはどうすることもできない。
 人々が寝静まった後、長い夜の慰みごとに、何ということもないような道具類を片付けつつ、残して置くつもりのない書き損じなどを破り捨てている時に、亡き人の手習いや遊び半分で描いた絵などが見出されると、亡き人が筆を持っていた当時に引き戻されるような心地がする。今も生きている人の手紙でさえも、ずい分と昔のものになってしまっている場合は、どのような際の何年のものだろうかと思いを馳せることになる。亡き人の使い慣れた道具など、心を持たないものは、時間が経っても変わらず、実に悲しい気持ちにさせる。