徒然草を読む12

第十五段

 どこであれ、しばし我が家を離れ他所に身を置くと、目が覚めるような心地がするものである。
 旅先では、ここかしこを見て歩くが、田舎びた所、山里などを訪れると、見慣れない事ばかりだ。幸便を探して都へ手紙をやり、「あの事もこの事も、都合のいい時期を見逃さないよう」などと伝えるというのも味わいがある。
 そのような所で過ごす時こそ、万事に心配りをすべきである。持ってきた道具まで、いいものは更によく見え、芸事の達者な人、見目美しい人は、普段より立派に見えるというものだ。
 寺・社などに人目を忍んでこもるというのもまた趣がある。