Badger's Parting Gifts
夜、夫を迎えに行った帰り、アパートの敷地内を車で走っていると、5メートルほど前方の植え込みの中から何かが走り出た。大きさは猫くらい。
あわててブレーキをかける。暗がりの中、二人で目をみはった。白っぽい顔にとがった鼻先、毛のない長いしっぽ、「あ、オポッサムだ」そう口に出した時にはもう、道を横切って反対側の植え込みの中に消えていた。
生きて動いているOpossum(キタオポッサム)を見たのは初めてだった。二人で興奮した。


ところで話は変わる。オポッサムの風貌は私にアナグマを思い出させた。子供の頃に読んだ本の中に、アナグマが出てくるものがいくつもあったのだ。ナルニア国物語の「カスピアン王子のつのぶえ」には言葉を話すアナグマ「松露取り」、そして「わすれられないおくりもの」のアナグマ、絵本雑誌「こどものとも」の一冊「66このたまご」に出てくるアナグマはちょっと悪賢かった。
これらの本のせいだろう、私にはアナグマに対する密かな憧れのようなものがある。今でもアナグマのことを思うと、少し胸がどきどきしてしまうのだ。
今晩のように静かな冬の夜、どこかでばったりアナグマと行き合うことを思ってみる。いつかのその時を想像するだけで心がはずんだ。