クロのこと

2009年に帰国することが決まってから、クロを日本へ連れて帰る準備を念入りに進めた。犬や猫を連れて帰る人は多いが、ウサギを連れて帰るという人はあまりいないらしい。インターネットで確認できる情報はほとんどなく、電話やメールで所定の機関や航空会社に必要な手続きや書類を問い合わせる必要があった。いかにもアメリカらしく、担当者によって回答が違うこともあったりしたが、なんとか準備を済ませて帰国当日を迎えた。帰国便のチェックイン直前になって、他のペットと一緒に貨物に載せなければならないと言われ(事前の確認では、座席の下に持ち込んでよいと言われていたのに)、かなり心配したが、なんとかクロは耐えてくれた。成田空港に着いてからは予定されていた通り、検疫のために丸一日(すなわち二泊)の係留を受ける必要があった。ただ、揺れない場所でしばらく過ごせることはクロにはよかったのではないかと思う。

こうして、ともかくもクロを無事連れて帰ることができた。

帰国してからは私がフルタイムで働き始めたことから、クロはケージの中で過ごすことが多くなった。そのせいもあったのかもしれない、あるときクロが脚を痙攣させていることがあることに気付いた。親にお願いして実家で面倒を見てもらうことにしたのは、2012年に帰省したときだったと思う(実家へ帰省するときは、いつもクロも一緒に新幹線に乗っていた)。親は思いのほかクロをかわいがってくれた。

そろそろクロが危ないと親から連絡を受けたのは2013年の3月、数ヶ月前からクロは体調を崩し、病院では多臓器不全と診断されていると聞いていた。金曜、仕事を終えた足で新幹線に乗り込んだ。数ヶ月ぶりに会ったクロはかなりやせた身体でケージの端にうずくまっていた。それでも、私が手を延ばすとヨロヨロと立ち上がり私の手を舐めてくれた。

私が戻った日曜の夜、まるで私が来るのを待ってくれていたかのようにクロは行ってしまった。

実家で過ごすクロ(2013年)