徒然草を読む170

ACORN2007-10-18

第二百二十九段

 よい工匠というのは、少し鈍い小刀を使うそうだ。妙観*1の小刀はたいして切れ味が良くはなかった。

第二百三十段

 五条大宮内裏*2には、化け物がいた。藤大納言*3殿によると、殿上人たちが、黒戸*4で碁を打っていると、御簾をまくり上げて見るものがあった。「誰か」と振り向くと、狐が人のように膝をついて座り、覗き込んでいる。「ありゃ、狐だぞ」と騒ぐと、狐はうろたえて逃げていったそうだ。
 未熟な狐が、化け損なったのであろう。

*1:みょうかん:現大阪府箕面市にある勝尾寺の観音像・四天王像を彫った僧と言われる

*2:1265年に亀山天皇の皇居となったが、1270年に焼失した

*3:とうのだいなごん:二条為世(にじょうためよ)、鎌倉後期の歌人で「新後撰集」、「新千載集」の撰者であり、兼好の歌の師でもあった

*4:くろど:「黒戸の御所」、清涼殿の北廂から弘徽殿に至る北廊