徒然草を読む179

第二百二十七段

 六時礼賛*1は、法然上人の弟子である安楽*2という名の僧が、経文を集めて作り、勤行としたのが始まりである。その後、太秦*3の善観房*4という僧が、詞章のそばに旋律を書き記し、声明*5にした。一度の念仏で浄土に往生できる事を説く最初の念仏である。後嵯峨院*6の治世*7の頃に始まった。法事讃*8も、同じようにして、善観房が始めたものである。

第二百二十八段

 千本釈迦堂*9の釈迦念仏*10は、文永*11の頃に、如輪*12上人が、始めたものである。

*1:ろくじらいさん:一日二十四時間を晨朝(じんちょう)・日中・日没・初夜・中夜・後夜の六時に分け、その時々に阿弥陀仏を礼拝・賛嘆する行法

*2:あんらく:法名は遵西(じゅんさい

*3:うずまさ:現京都市右京区

*4:ぜんかんぼう

*5:しょうみょう:経文に節を付けて唱える事

*6:第88代天皇

*7:1242〜1246年に加えて、ここでは院政の行われた1272年までを含んでいる

*8:ほうじさん:「転経行道願往生浄土法事讃(転業行どうがんおうじょうじょうどほうじさん)」の略

*9:せんぼんしゃかどう:現京都市上京区にある大報恩寺

*10:毎年二月(現在は三月)に、釈尊の名号を唱える行事

*11:1264〜1275年

*12:にょりん:藤原師家(もろいえ)の子で、大報恩寺の第二代