第二百十二段
秋の月は、限りなく素晴らしいものである。いつであっても月はこのようなものだと思って、他の季節と区別がつかない人がいるなら、まったく情けない事である。
第二百十三段
天皇の御前の火炉に火種を置く時は、火箸で挟む事はしない。土器から直接に移すのである。そうであるので、火種が転がり落ちないように気をつけて、あらかじめ炭を積んでおくべきである。
石清水八幡宮への御幸の際、お供の人々が、浄衣を着て、手で炭を継ぎ足されたところ、朝廷の儀式に詳しいある人が、「白い衣を着ている日には、火箸を用いて差し支えない」と言った。