徒然草を読む163

Female Ruby-throated Hummingbird

第二百七段

 亀山殿*1を建てるために土地の地ならしをしていると、大きな蛇が数え切れないほど集まっている塚があった。「この土地の神である」と、作業に携わる者が事の次第を後嵯峨上皇に申し上げたところ、上皇から「どうするべきか」とのお尋ねがあった。人々が皆、「古くからこの土地を居所としている物であるので、無闇に掘り捨てる訳にはいかない」と言う中で、徳大寺の太政大臣*2一人が、「天皇の治められている国土に暮らす蛇が、皇居を建てる事に、何の祟りを成すというのだ。神の霊は邪な行いはしない。取り立てて気にする必要はない。ただ、すべて掘り捨てればよい」と言ったので、塚は崩され、蛇はすべて大井川*3に流されてしまった。
 特に祟りはなかったそうだ。

*1:仙洞御所、1255年に後嵯峨上皇が造営

*2:実基

*3:保津川が嵐山の麓を流れる間の呼称