徒然草を読む153

ACORN2007-08-31

第百八十九段

 今日はあの事をしようなどと思っても、他の急な用事がまず出てきて、それに紛れて一日が過ぎる。待っている人は都合があって来ないのに、当てにしていなかった人はやって来る。期待している方面の事は上手くいかず、思いもよらない方面の事ばかりが上手くいく。煩わしいと思っていた事はどうという事もなく、容易だと思っていた事には実に心を悩まされる。このように、日々が過ぎ行く様子というのは、前もって思っていたものとは少しも似ていない。一年も同じように過ぎる。一生の間もまた同じである。
 前もっての予想が、すべて違ったものになるのかと思えば、まれにその通りになる事もあるので、ますます物事というのは定め難い。不定であると心得る事だけが、真実であり間違いのない事なのである。