徒然草を読む147

第百八十一段

 「『降れ降れ粉雪*1、たんばの粉雪』という童謡があるが、あれは雪の様子が米をついて篩ったものに似ているので、粉雪と言うのである。また、本来は『たんまれ粉雪』と言うべきところを、間違って『たんばの粉雪』と言っているのだ。続けて、『垣や木の股に』と歌う」と、ある者が言っていた。
 だがこれは、昔から言われている事ではないだろうか。鳥羽天皇*2が幼くいらっしゃった頃、雪が降っているのをご覧になって、このようにおっしゃったという事が、讃岐典侍*3の日記に書かれている*4

*1:こゆき

*2:第74代天皇

*3:さぬきのすけ:藤原長子、堀河天皇に仕えた翌年に典侍になり、天皇崩御後は鳥羽天皇に仕えた

*4:「――(前略)『降れ降れこゆき』と、いはけなき御けはひにて仰せらるゝ聞ゆる。(以下略)――」