徒然草を読む80

第九十八段

 高徳の僧が言い残した事を書き記し、「一言芳談*1」とかいう名を付けられた書物を読んだ際に、自身の心と重なるところがあり覚えていた事。
一 しようか、それともしないでおこうかと迷うような事は、大抵、しない方がいい。
一 後世を思う者は、ぬかみそを入れる瓶一つも持つべきではない。経・本尊に至るまで、よい物を持つなどというのは、つまらない事である。
一 遁世者は、物がない事を不自由と思わぬような生活を心掛けて日々を過ごすのが、最上のあり方である。
一 修行年功を積んだ僧は修行年数の浅い僧になり、智者は愚者になり、富める人は貧しくなり、能ある人は無能になるべきである。
一 仏道を願うというのは、それ以外はないという事である。暇のある身になって、世の中の事を心に掛けないのを、第一の道とする。
この他にもあったのだが、思い出せない。

*1:いちごんほうだん:浄土宗の高僧の法語を集録したもの