徒然草を読む50

第六十一段

 皇后・中宮・女御などの高貴な方が御産の際、こしき*1を屋根から落とすというのは、必ずするべき事と決まっているわけではない。御胞衣*2が滞った時に行われるまじないである。滞る事がなければ、こしきを落とす事はない。
 元々、下層から始まった事で、さほど根拠のある説があるわけではない。ただ、「大原」が「大腹」に通ずるからと、大原の里のこしきを取り寄せる事になっている。古い宝物を納めてある蔵から出てきた絵に、身分の低い人が子を産んでいる時に、こしきを落としている場面が描かれていた。

*1:素焼きの土器で、飯を蒸すのに用いた

*2:えな:後産のこと