徒然草を読む29

クロ

第三十六段

 「久しく家を訪れていないため、どれほど恨んでいるであろうと、自身の怠惰が思い知らされ、言い訳する気にもなれずにいる時、女の方から『仕丁*1はいますか。ひとり貸してください』などと言って寄こすというのは、思いがけないことで、嬉しいものだ。そのような気立ての人はいい」とある人が言っていたが、その通りに違いない。

第三十七段

 朝も晩も、何の隔てもなく親しんだ女が、ふとした時、こちらに気を遣って、身だしなみを整えているのを見ると、「今更、そのようなことをしなくても」などと言う人もあるが、やはり、なるほど、よい人だなと思う。
 親しくなっていない女が、打ち解けたような事を言ってきたならば、これもまた、よいなあと心がひかれてしまうであろう。

*1:じちょう:大臣家などで、雑用に従事する者