徒然草を読む23

第二十七段

 譲位*1の儀式に伴う宴会が行われ、草薙剣八坂瓊曲玉八咫鏡三種の神器が新帝に渡された時には、この上なく寂しい思いがした。
 この歌は新院*2が、皇位を退かれたその年の春、読まれたものだとも聞く。
   殿守のとものみやつこよそにして掃はぬ庭に花ぞ散りしく*3
 新しい治世の忙しさに紛れて、本院*4・新院のお住まいには訪れる人もなく寂しげな様子である。こういう時にこそ、人の心というものは露わになるのであろう。

第二十八段

 天皇が御父母の喪に服せられる諒闇の年*5ほど、物悲しいものはない。
 諒闇の初めに天皇がこもられる仮御所の様子はというと、板敷きが低く造られており、葦の粗末な簾が掛けられ、御簾の上部に張られる布帛*6は粗雑で、御道具類もすべてが劣っている。人々の装束・太刀・太刀の飾り紐まで、普段とは違っていて重圧感を覚える。

*1:ここでは、1318年2月の花園天皇から後醍醐天皇への譲位を指す

*2:既に上皇がいる時、新たに上皇となった方の呼称で、ここでは花園上皇を指す

*3:主殿寮の役人がなおざりにして掃こうとしない庭には、花が一面に散り敷かれている

*4:ここでは後伏見上皇を指す

*5:ここでは、1319年11月の後醍醐天皇の生母・談天門院(藤原忠子)の崩御によるものを指す

*6:ふはく