平家物語を読む45

ACORN2005-11-19

巻第三 つじかぜ

 治承三年五月十二日の正午頃、京中につむじ風が吹き荒れ、たくさんの家屋が倒壊した。風は中御門大路と京極大路の交差する辺りで起こって、南西の方角へ吹いて行き、棟門・平門を吹き抜けて、四、五町十町に渡って吹き荒れ、家屋の柱や横木などが空に散らばった。冬の空に木の葉が舞うように、屋根に用いた檜の皮や薄い板が空に乱れ舞った。ものすごい音が鳴り響き、あの地獄で吹くという業風でさえも、これ程ではないように思われた。家屋が壊れただけではなく、多くの人が命を失った。牛馬に至っては。数え切れない程が死んだ。これはただ事ではない、占いによって神意を伺うべきだと、神祗官*1に占わせる事にした。「今後百日以内に、重い俸禄を受ける大臣の身に凶事が起こるので用心せよ。また、国の政治及び仏法・王法が共に傾き、相次いで戦乱が起こるだろう」占いを行った神祗官、陰陽寮が共に、このような事を言った。

*1:太政官と並ぶ最高の機関で、神祗・祭典を司り、亀占を行った