徒然草を読む164

第二百八段

 経文など巻物の紐を結ぶ際には、上と下からたすきに紐を交差させて、その二本の紐の間から先端を横に引き出すというのが、普通である。そのようにしたものを、華厳院*1の弘舜*2僧正はほどいて直させると、「これは、この頃のやり方である。実に好ましくない。正しくは、ただ、くるくると巻いて、最後に上から下へ紐の先端を差し挟むのである」と言った。
 古老であり、このような事もよく知っている人であった。

*1:けごんいん:仁和寺の院家の一つ

*2:こうしゅん