徒然草を読む117

Immature Brown Pelican

第百四十三段

 人の臨終の様子が立派であった事などを、誰かが語るのを聞いていると、ただ平静にして乱れずと言えば奥ゆかしいものを、愚かな人は、不思議な普通とは異なる様子を語り、言った言葉も振る舞いも、己が好む方に作為して誉めそやす。こういう事こそ、その人の日頃の願いから離れているのではないかと思われる。
 臨終という大事は、権化の人も定める事はできない。博学の士も測る事はできない。日頃の願いと違う所なく己のままで死んでいく人を、誰かの見聞によって判定するべきではない。