徒然草を読む96

百十六段

 山号・寺号・院号の類から、その他のいろいろな物についてまで、名を付ける際、昔の人は少しも考えをめぐらさず、ただありのままに平易に名付けた。この頃の名は、深く考え、才覚を示そうとしているように思われ、聞いていてひどく鬱陶しい。人の名においても、見慣れぬ文字を用いようとするのは、何の益もない事である。
 何事においても、珍しい事を探し出し、異説を好むというのは、浅才の人が必ずする事であるそうだ。

百十七段

 友とするのに悪い者には、七つある。一つは、身分が高く、重んずべき人。二つは、若い人。三つは、病を持っておらず、身体の丈夫な人。四つは、酒を好む人。五つは、猛々しく、勇んでいる兵士。六つは、虚言を成す人。七つは、欲の深い人。
 よい友には、三つある。一つは、物をくれる友。二つは医師。三つは、智恵のある友。