第八十三段
竹林院の入道・左大臣殿*1は、太政大臣に上がられるのに、何の支障もないはずであったが、「心が引かれない。左大臣で終わりにしよう」と、出家された。この事に感心された洞院の左大臣殿*2も、太政大臣へ望みを持たれる事はなかった。
「亢竜、悔有り*3」などとも言われるように、月は満ちれば欠けるしかなく、物事も盛りを迎えて後は衰えるしかない。万事において、先が行き詰っているのは、破綻が近いというのが道理なのである。
竹林院の入道・左大臣殿*1は、太政大臣に上がられるのに、何の支障もないはずであったが、「心が引かれない。左大臣で終わりにしよう」と、出家された。この事に感心された洞院の左大臣殿*2も、太政大臣へ望みを持たれる事はなかった。
「亢竜、悔有り*3」などとも言われるように、月は満ちれば欠けるしかなく、物事も盛りを迎えて後は衰えるしかない。万事において、先が行き詰っているのは、破綻が近いというのが道理なのである。