第五十二段
仁和寺*1の法師は、年老いるまで石清水八幡宮を拝んだことがないことを情けなく思い、ある時、思い立ってただ一人、徒歩で参詣した。石清水八幡宮付属の極楽寺・高良神社などを拝み、これですべてだと思い込んで帰途についた。
そうして、傍輩に向かい、「年来思い続けていたことを果たしてきました。聞いていた以上に尊いものでありました。それにしても、参詣する人ごとに山へ登っていくのは何事であろうかと知りたかったけれども、神社に参拝するのが本意であるからと思い、山まで行くことはしませんでした」と言ったという。
少しのことにも、案内役はあった方がいい。
