ナルニア国物語

The Chronicles of Narnia CD Box Set
 私が初めて「ナルニア国物語」を読んだのは中学に通っていた頃で、あまり早い方ではない。日本の面白いと思われる本を読み尽くしたので、恐る恐る手を出した感がある。幼い頃は、日本の本も海外の翻訳本も手当たり次第に読んでいたが、ある時から、翻訳本に多い妙な日本語の言い回しやバランスを欠いたリズムが気になるようになった。そうして翻訳の本からはしばらく離れていたのだが、いよいよ読みたいと思うものがなくなったので手を出したのだ。
 「ナルニア国物語」は面白かった。私はすぐに夢中になり、七冊すべてを読んだ。その後、何回繰り返し読んだかわからないほどだ。同級生が好きな男の子の話しをするのを聞きながら、私は「アスランに会えたらなあ」などと本気で考えていた。もちろんそんなことは友人に言うはずもなかったし、それ以上に読んでいる本の話しなど友人にしたことはなかった。それでも、悔しいことや面倒なことなど、思春期の女の子たちの間で起こる様々な出来事を何とか乗り越え、ひねくれることもなくこの時期を過ごすことができたのは、ひとえに「ナルニア国物語」のような本があったからだと思っている。誰も何も教えてはくれない(と思い込んでいた)が、本だけはどう生きたらいいのかを教えてくれる、その事実が私を強くしていたのだろう。
 「ナルニア国物語」をきっかけに、それから私は海外の物語もどんどん読むようになった。まだ情報が少なかった時代、「指輪物語」が六冊からなる大作だとは知らずに、父に買ってほしいとお願いしたことがあった。注文していた本屋から本を受け取った父もその数に驚いたようだ。六冊が収められた大きなセットを、帰宅した父から受け取った時は本当に嬉しかった。ちょうどクリスマスの頃だったように思う。レンガ色の布の表紙は薄い紙で丁寧に包まれ、最後のページには、開くと本の大きさの何倍にもなる地図が折り込まれていた。もちろん今でも持っている。
 今日、たまたま立ち寄った本屋で「ナルニア国物語」の原書「The Chronicles of Narnia」のオーディオブックを見つけ、当時を思い出して朗読で聞いてみたくなった。自分一人だったら決して買うことのない値段なのだが、夫が快く買ってくれた。時代順*1に七冊分のCDが収められており、全部で三十一枚からなる。ポーリン・ベインズのイラストが装丁の至るところに見られるのも嬉しい。最高のクリスマスプレゼントになった。明日から編物をする時にはこれをかけることにしよう。

*1:「The Magician's Nephew(魔術師のおい)」が一巻になっている