星の牧場

庄野英二の「星の牧場」は、時々ふと読みたくなる本の一つである。
初めて手にしたのは小学生のころだった。もともと姉の本だったのを私が譲り受けた。
戦争から帰ってきた青年モミイチは牧場で働いている。周りの人々はモミイチの頭が少しおかしくなっていることに気づいている。
物語は現実とモミイチの夢の世界とが途切れずにつながっており、独特の雰囲気を作りだしている。
当時、小学生の私はこの物語を好きにはなれなかった。が、年を経るにつれてこの物語の底に流れる作者の静かな哀しみを感じるようになった。
最後のシーンは、知っていても涙腺がゆるみそうになる。