春告魚

今住むこの町に海はない。
海まで車で十分と離れていない町に住んでいたころ、よく釣りに出かけた。
休みの日は朝から日が高くなるまで、ときには晩ご飯のおかずにと夕方にほんの一時間だけ。
夏は水面近くを群れるサヨリを引っ掛け、冬はテトラの透き間からカサゴをねらった。
そして春にはメバル。
メバルが掛かるようになりしばらくすると、外はぐんと暖かくなった。